中国動画配信サイトは日本アニメの輸出先に。ゾンビランドサガ・・・ン鳥栖

こんにちは、セルジオ筑後です。
上海滞在も残すところあと一日、あとは明日の飛行機で佐賀へ帰るだけだ。
本当ならばフェルナンド・トーレスのユニフォームを着て衡山路のスポーツバーでカクテルを飲みながらサッカーでも見たいのだが、それは時間が許さない。と言うのも、上海市街地から空港まで60キロ、地下鉄を乗り継いで1時間半。高速バスを使えば1時間で着くが、バス停までの足がない。そして、飛行機の離陸時間は朝8時40分。朝7時過ぎに空港へ辿りつくには、始発の地下鉄に飛び乗るしか無い。5時起きだ。というわけで、遠征最終日の夜は毎回ホテルで大人しく動画を見るのが習慣になっている。

これが経費削減というものだ。

上海の夜

 PCのスイッチを入れ、ブラウザを立ち上げる。今日は明日が早いんで(LCC)、近所のコンビニで安いサントリービールとつまみを買ってから、隣に人がいない角部屋だったので、そこでしこたまビール飲んでから動画を見始めたんや。

 グーグルクロームを開いて動画サイトのURLを入力する…。

 

 固まった。

 

 これが現代中国七不思議の一つ、「Googleが非常に使いにくい」だ。愛用のChromebookが、ただのワープロと化す。

一応、Yahooや一部テキストサイトを見るには問題ないのだが、中国国内のサイトを見ようとすると、何故か画像や動画がブロックされてしまうことがある。中国国内の動画サイトを確実に楽しみたければ、EdgeかSafariを使うしかない。そういう訳なので、中国ではSerfaceがアホみたいによく売れるのです。待てよ、ということはマイクロソフトがGoogleと中国と焚き付けた可能性が微粒…いやあ無い無い、たまたまや、たまたまや!

 

 アベマTVやニコニコ動画はあるものの、実質Youtubeの独壇場な日本と違い、中国では無数の動画サイトが覇を競わんと乱立している。別のPCを準備している間、中国動画サイトの歴史を簡単に振り返っておきたい。

 実は、動画サイト黎明期の2006年から数年間は、中国でもYoutubeを楽しむことができる時代があったのだ。我々はISDNレベルのほっそい回線で、Youtubeやサービスを開始したばかりの「土豆」「優酷」を楽しんでいた。

 そんな動画サイト業界に衝撃が走ったのは、それから数年後のある日のことであった…。

 

 Youtubeで上海から日本の動画を見るのを週末の楽しみにしていた当時の俺は、その日も異様に分厚いノートパソコンを立ち上げ、ブラウザを開いた…。

 「このサイトにはアクセスできません」

 まだADSL(下り1.5M)だった当時、単にデータ転送が間に合ってないだけかも知れない。もう一度アクセスするーー。

 「404エラー ページが見つかりません」

 これはアレですね。

 アク禁というやつです。

 

 周知の事実だが、中国ではWebサイトの閲覧に制限があり、例えばアダルトサイトや反社会的サイトには一切アクセスできない。この「反社会的」には、「国内情勢を不安定化させる一切のもの」が含まれるので、犯罪集団やカルト宗教のみならず、国内の秩序を乱しかねないサイトは全て「金盾」と呼ばれるシステムでシャットアウトされる仕組みになっているのだ。

 以前は、この「金盾」が発動すると、「このページにはアクセスできません」と表示が出た後、バスケットボールの反則よろしく1分間ほどどのサイトにアクセスしても「404」が表示される仕組みだった。つまりYoutubeは、何かしらの理由で突然アクセス禁止になったのだった。

 

 しかしこれが、「土豆」「優酷」に始まる「中国動画サイト」戦国時代の幕開けとなったのである…。

 Youtubeのアク禁によって空白地となった中国市場で、「土豆」「優酷」の2大動画サイトは、国内外の様々なコンテンツを提供する世界の窓口として大いに繁栄した。しかし残念なことに、ここは日本ではなくて中国だ。特に何もしなくても、国産メガ動画サイトとして生き残って行けるほど甘い市場ではない。多くのIT技術者が独立し、雨後の筍のように動画サイトを立ち上げる中、ある年、中国に画期的な動画サイトが現れた。なんと、動画を見ながら自分のコメントを動画に流せるのだ!動画コンテンツを楽しむだけでなく、他のユーザーとの一体感を味わえるこのサービスは大いに当たった。

 そのサイトの名を「AcFan」と言った…。

 

 どうやら準備ができたようだ。

 さっそく動画を楽しむことにしよう。

 日本のアニメは、中国の動画サイトにとって強力なメインコンテンツだ。日本人が誰も知らないようなアニメ作品が、動画サイト内に山のように積み上げられている。今見ている佐賀県の女子高生がゾンビになってアイドルとして活躍するアニメも、中国で動画サイトを漁っていて、たまたま見つけた。

 今見ている動画サイト「AcFan」は、昔のニコニコ動画のように他の動画サイトから動画だけを引っ張ってきて、コメントだけを書くタイプのいわゆる「寄生型動画サイト」だ。

 サービス開始はニコニコ動画から遅れること3ヶ月後の2007年6月、動画サイト界の巨人たちに翻弄されながらも、しぶとく生き残ってきた隠れた老舗で、中国の動画サイト業界の歴史を語る上で欠かせない存在となっている。

と言うのは、AcFanを見ていた某ユーザーが「こんなサイトを自力で運営したい」と始めたのが「ビリビリ動画」なのだ。日本ではニコニコ動画以降メジャーな動画サイトが生まれなかったが、ここは中国。今やモバゲーやEコマースも手掛ける一大企業と化したビリビリ動画も、元を辿ると中国における視聴者参加型インタラクティブプラットフォームの走りである「Acfun」から生まれたのであるーー。

中国動画配信サイト「ビリビリ動画」

 ちなみに、ビリビリ動画の「ビリビリ」は、創設者がとあるアニメの電撃少女の大ファンであったことからそう名づけられた。何もドラゴンボールや名探偵コナンだけが日本のアニメじゃない。世間的にはあまり知られていないコンテンツでも、海外の文化史に大きな痕跡を残すことがあるのだ。

 

本編が始まった。面白かやなかですか。動画の横には現在動画を見ている人数とコメント数が表示される。どうやら今俺と同じ動画を見ている人間は3,000人、そしてコメント数は5万件。

 いくら人気作とはいえ、5万ですよ5万!たった一本のアニメで!

 

 動画コメントは、本家本元リスペクト(?)して「弾幕」と呼ばれているが、中国の弾幕は本当に弾幕だ。弾幕オンにすると漢字ばっかりで動画が見えない。

弾幕濃ゆいぞ!何やってんの!

動画配信サイトAcfunの弾幕。あれ?どこかで?
動画配信サイトAcfunの弾幕。あれ?どこかで?

 もう夜11時か。思わず一気見してしまった。弾幕を見るに、中国でも伝説の昭和のアイドルが一番人気らしい。こんなに面白いご当地アニメがあったことを知っただけでも、上海に来た甲斐があったというものだ。最終話を見たら寝よう。…最終話のオープニング前に、声優さんのインフォメーションが流れた。

 「動画再生数が2,000万回を突破しました!」

 延べ人数で中国人の70人に1人が、佐賀県に注目しているこの事実。一人あたり平均10回見たとしても、中国人の700人に1人が「佐賀県」という言葉に反応するということだ。

東京で佐賀県についてアンケートを取っても、「ああ、あのはなわの」以外の反応が返って来ないこと請け合いな現実を鑑みれば、この数字が如何に凄いかが分かっていただけると思う。

 

 そしてこのインフォメーションは、もう一つ重大な事実を我々に示している。

それは、「正規に放映権を購入して日本のアニメを放送している」ことだ。

香港辺りからしれっと入ってきた海賊版が平然と流されていた土豆優酷全盛期からは考えられない事態だ。昔の中国のイメージを持つ方からすると信じられないかも知れないが、オンライン動画に関しては中国の方が真っ当な商売をしているのである。ちなみにこのアニメの放映権を買ったのはビリビリ動画ではなく「ACFAN」という動画サイトだが、どうやら放送権の争奪戦があったらしく、香港や台湾、マカオでの放送権はビリビリ動画が獲得したようだ。先進国で海賊版が幅を利かせる一方、中国で正当な競争で動画サイト間のコンテンツ獲得競争が行われる時代が来るとは、10年前に一体誰が想像しただろうか。

 

 ここで日本人のほとんどが疑問に感じるであろう疑問に答えておきたい。

規制が厳しい中国で、果たして日本のアニメに放送許可が下りるのか?

結論だけ言うと、中国でも日本のアニメのほとんどを楽しむことができる。多少バイオレンスだろうが、お色気要素が含まれていようが、特に問題はない。銃でドンパチは先の大戦との絡みで許可が降りないんじゃないか、と思われがちだが、純粋にエンターテイメントとして受け止められているので、中国でも存分に戦車道を極めることができる。ウィッチに中国人を混ぜていればもっと人気が出ただろうに、惜しいことをしたものだ。

ただ、第二次大戦時の戦艦や駆逐艦が女の子になって戦うアニメはさすがにダメだったようだ。

アズールレーンはセーフなのに何故こっちがアウトなのかはわからんけど…。

 

 現在CCTVでは、国産アニメ以外を楽しむことはできない。しかし「ドラえもん」や「ちびまる子ちゃん」、もっと遡れば「一休さん」に始まる中国での日本のアニメ文化は、オンライン動画サイトにその主戦場を移し、今でも多くの中国の人々を感動させているのであるーー。

佐賀県の田んぼに降り立つ

俺が下りたのは、田んぼのどまん中。不幸にも早逝した女の子が、死んだ体で精一杯生きようとするこのアニメの聖地に、俺は帰ってきた。最近不幸続きで心がゾンビィになりかけていた俺を勇気づける良いストーリーだった。明日が続く限り、前を向いて生きていく。

(社会的に)死んでも夢を叶えたい!

いいえ、(経済的に)死んでも夢は叶えられる!

それは希望?それとも絶望?

過酷な運命(就職氷河期)乗り越えて、

(人)脈が無くても突き進む!

それが俺たちの、佐賀だから!

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