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#8 上海に行ってきました:ホンコンシティの死闘《前編》

#8 上海に行ってきました:ホンコンシティの死闘《前編》
セルジオ筑後です。 上海に行ってきました!  眼下にきらめく100万ドルの夜景、世界の富が集いし魅惑の街。立ち並ぶ古びたビル群、雑踏に広東語が飛び交い、たまにジャッキーチェンとか落ちてくる。初めて中国の地を踏んでからはや十数年、ついに憧れの富の都、ホンコン・シティに降り立つ時がやってきた!聞くところによると香港はシンガポールと並ぶ金融都市で、人々は豊かな生活を送っているらしい。ホテルは予約した、香港ドルへの両替もバッチリ、いざ行かんビクトリア・ピークへ!!    イミグレーションを通り過ぎれば、そこはもう、香港。  香港の空港は人工島にあり、市内へ出るにはエアポートバスか列車を利用するのが一般的だ。バスはちょっと値段が張るそうなので、ここは列車で。  「80ドルです」(約1,200円)  1,200円、意外と高い。 赤いお札を出して列車に乗り、一路ホテルを目指す。  旅行においては、一にも二にもまず宿だ。北海道のローカル番組でもそう言っていた。まずホテルへチェックインし、シャワーを浴びて、ホンコン・シティへ繰り出すのだ。  地下鉄の階段を登ればホテルは目の前、まずはホテルにチェックインしましてと。  …。  真っ向に立つ不気味な城塞 巣食う男はヤバイのなんの  今日の宿がボロいビルなんて、たとえ夢でも思えない…。    いや、ここホテルじゃないじゃん  て言うかどう見ても普通の場所じゃないじゃん  スマホにメモしたホテルの住所を確認する。間違いない、ちゃんとctirpで予約したあの場所だ。agodaやexpediaで価格比較しながら予約したからきっとだいじょうぶ。写真で見る限り部屋はキレイだったし、外観はアレでも中身は快適なのかもしれない。  恐る恐るビルの中にお邪魔する…
本当にホテル? 不安になってきた。。
  普通じゃねえよここ  俺は香港に来たんだよ、ムンバイに来た訳じゃないんだよ、なんでインド人だらけなんだよ!  「ホテル?ホテル?」ヒゲのインド人がしきりに俺に話しかけてくる。こんな場所はとっとと立ち去るに限る。しかしホテルの予約サイトによると今晩の宿はここの6階らしい。周囲にはバックパッカーらしき旅行者が列を作ってエレベーターの到着を待っている。お客さんがこれだけいるということは、こう見えても宿だけはしっかりしているんだろう。
エレベーターの前はお客さんが多くて少し安心しました。
 待つこと10分、ヨーロッパ系バックパッカー夫婦と一緒にエレベーターに乗った俺は、6階で降りて宿のフロントを目指す。このビルのひと部屋を借りる、どうやらここはゲストハウスのようだ。格子の扉の奥に記帳台が見えてきた。「有人嗎?(誰かいますか?)」  インド人が出てきた。    「マネー」開口一番インド人から宿代を要求される。ポケットから200ドルを渡すと、そのインド人は俺のパスポートを見ながら黙ってキャンパスノートに何やら書き始めた。どうやら宿泊者名簿らしい。早く部屋を案内してくれと切に願う俺に、その男は信じられない言葉を投げかけた。  「トゥデー、ノー、ルーム」    なに抜かしとんじゃこのインド人は!  金だけ貰って泊まれません?ふざけんじゃないよ! …そう怒鳴りたい気持ちを抑え、ホテルの予約手続きをちゃんと済ませていると中国語で説明する。  「?」  ダメだ、分かった、こいつ中国語も英語も全然喋れない…。 仕方がないので、こちらも片言の英語で対応する。何とかこちらの言いたいことが分かったらしく、男は誰かに電話をかけ始めた。聞いたこともない言葉で喋っている。たぶんヒンディー語か何かだと思うが、そんなことはどうでもいい。とにかくさっさと腰を落ち着けたい。    「ブラザー、ブラザー」電話を終えた男は、スマホの画面に映る男の写真を見せながら何かを訴えかけている。「ステイ、ブラザー、ルーム」。要するにこういうことらしい。どういう事情かわからんが、とにかく今は空き部屋が無いので、代わりに兄のゲストルームに案内すると。一階に降りてこの男に声をかけてくれと。…ってこの写真の男、さっきの怪しいインド人やないか!あれお前の兄貴だったのかよ!ともあれ、今はこいつの指示に従うしかない。一階へ降りてさっきのヒゲに声をかけ、部屋に案内してもらう。
三畳部屋にベッドとトイレがあるだけの部屋
 皆さん、どう思われます?  せっかく憧れの香港まで来たのに、三畳部屋にベッドとトイレがあるだけの独房に押し込められるなんて、俺が一体何をしたと言うのだ?おお向かいの住人よ、お前は一体どんな罪を犯したんだ?…いやちょっと待て、ドア半開きの向かいの独房から、ターバンを巻いたインド人の爺さんがこちらをじっと見つめている!額にホクロがあり、長い髭をたくわえている、日本人が想像するステレオタイプのインド人だが、どう見てもこいつはマハラジャじゃない。むしろ物乞いに居そうなタイプだ。いつからここにいるかわからんが、死んだ魚のような目をしている。香港に着いてまだ数時間しか経ってないが、さっさと福岡へ帰りたい。バクシーシ!    ベッドメイクが終わったブラザーから鍵を渡され、片言の英語で説明を受ける。チェックアウトの必要はない、朝になったらベッド脇に鍵を置いてそのまま出ていけば良い、外出するときは電気や空調をちゃんと消すこと、Wifiはオレのを使え…説明を終えたブラザーは、そのまま部屋を出て行った。  一泊三千円の独房を見渡す。テレビもコンセントも無い窓なし部屋だが、暑さ対策のためか母国のホテルを模倣しているのか、空調と扇風機はちゃんと設置されている。トイレの横にシャワーがついているが、当然のようにお湯は出ない。時間は午後3時を過ぎている。そろそろ観光に出るか…半袖に着替えてホンコン・シティへ繰り出そうとした俺を、更なる悲劇が襲った。    カギが閉まらねえ。    急いで部屋を飛び出し、管理人室へ向かう。数人のインド人が携帯をいじりながら何やら駄弁っている中に乱入し、血相を変えて怒鳴りつけた。 「カギが閉まらない、部屋を変えてくれ!」。 俺の脳内にはスタン・ハンセンの入場テーマが流れている。 真剣重大怒鳴り場だ。しかし。    「あいどんのー」    何を言ってもあいどんのー。思わずウエスタンラリアットをかましたくなったが、三人に勝てるわけがないと判断した俺は、すごすごと部屋へ引き下がった。もうこんな場所は嫌だ、まともなホテルに宿泊希望だわ!日本人がこんなところに泊まったら、日本の未来が世界に嘲られてしまう。  カギが閉まらないことがバレないことを祈りつつ外に出て、他のホテルを当たる。    「2400香港ドルです」(約35,000円)    あ、こりゃだめだわ。  日本円で35,000円、いくらなんでも、たかだか一泊に航空券代より高い金を出すわけにはいかない。金も計画性もない奴が香港へ行くとこうなるんです。哀れ俺は九龍城へ引き戻されていく…。  部屋に戻りベッドに寝そべる。せっかく香港まで来たのに、外出もできないまま天井のシミ数えて終わりかい。そんな屈辱には耐えられないが、さりとてこんな場所に荷物を置きっぱなしにしたが最後、向かいのラリった爺さんによってスーツケースがカラになること請け合いである。取るべき手段はただ一つ!    俺はスーツケースを手に取り、バックパックを担いで街へ繰り出した。  地獄の観光旅行は、こうして幕を開けたのである…。    つづく >> ホンコン・シティの死闘《中編》はこちら